恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
悩み続けて行動に移せないまま、結局自宅アパートの前まで帰って来てしまった。


あの飲み会の翌日、気まずいけれど声をかけた。


けど、返事はしてくれるものの明らかに作られる壁にひるんでしまった私は、その後も謝るきっかけを探しながらも、いざとなれば言葉が見つからずに既に数日。


何も答えはでていないのになんて言えばいいんだ。
っていうか、今日は仕事なんだろうか?


いつもなら恵美の予定は把握してるのに。


そんな些細なことすら、私の落ち込み具合に拍車をかけるのには充分だ。
溜息と一緒に郵便受けを開けた。



「うわっ」



ぐるぐる考え事ばっかりしてたから、反応するのに5秒くらいかかってしまった。


いつもは、数枚の広告やダイレクトメールくらいのポストの中に、空間が全部埋まるくらいにぎっしり詰め込まれてた。


――― ゴミ。


広告やらパンの袋やら。
くしゃくしゃに丸められた姿からわかるのはそれくらいで、後は態々広げたりしないから何かまでは見えないけど、兎に角ゴミ。



「もう!堕ちてる時にこんなしょうもないいたずらやめてよね」



母の家に行くのに持参していたゴミ袋が一枚残ってたから、広げて中身を掻き出した。
腹立ち紛れに、バン!と 大きな音をたてて郵便受けのフタを閉める。


あ。歪んじゃった。


踏んだり蹴ったり。弱り目に祟り目。
そんな言葉がくるくる回る。


明日こそ、謝ろう。



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