恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
どういうつもりで都合のいい男というポジションに甘んじているのか


こいつの腹が一番読めない。
目を細めて見下ろすが、当然ながら何が見えるわけでもないし。



「わかった、伝えとく」



手をかざして、踵を返しながら他の面々にも視線を向けた。
随分と嫌われたのか、あの子はもうちらりともこちらを見ようともしなかった。



貯蔵庫に戻ると、マスカラやらアイラインやら。
とりあえず黒いものでぐちゃぐちゃになった顔で放心状態のくれはちゃんを連れて店を出る。


手を引いてコインパーキングまで連れて行く数分の間、時折わぁんって大声を上げていた。


泣いてる女引っ張ってる時点でただでさえ注目浴びてるのに、余計目立つだろうが。



こいつ

結構めんどくさい

っていうかこいつらめんどくさい



割り切ってるというには
友人に避難されたくらいで、バカバカしい。


開き直れもしないなら、端から遊ぶなって話だ。


溜息を落として自分の後頭部を掻き毟る。


面倒なのに
繋いでしまった手が案外しっかりと握り返してくるもんで


放すこともできなくなった。
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