恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~




「そこ、右に曲がって暫くまっすぐです」



少し息が整って、でも道案内する声はどうしても掠れてしまう。
極小音量のラジオと、時折私が鼻をすする音しか無いから、車のエンジンやタイヤの音がやけに耳について、そこへウィンカーのカチカチという音が混じる。


目立つかな。
先程から鼻の下が濡れる気配がしていて、気づいたら啜り上げるけどまたすぐ濡れてくる。


いいか、散々醜態さらした後だし
バッグからポケットティッシュをだして、思い切りかんだ。


ぶびびびび!


……思ったより目立った。
ぶっ!と吹き出す音がして、くっくっとあの喉を鳴らす笑い声。



「もうちょっと遠慮とか取り繕うとかないの」



まっすぐ前を向いてる横顔は、少し眉の寄った苦笑が浮かぶ。



「疲れちゃって気を使う体力が残ってないです」



泣きすぎて、鼻の下とはぁと漏れる息が熱い。




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