恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
泣くってこんなに体力いったかなぁ。



「くれはちゃん、あの子と喧嘩してたのか」

「狭山です。そうですよ、やっと仲直りしたところだったのに……」



恨めしくぼやいてみるのは、別に彼の所為にしたわけではないけど。ちょっとくらいは責任感じて欲しい。



「美里だっけ。元々はなんで喧嘩してた?怒りの着火点から考えて男絡みか」

「しっかり名前覚えてんじゃないですか。なんでって…男絡みというか」



語尾が徐々に頼りなげになるのは、原因が男絡みというよりは、私の素行の悪さにあると思うからだ。


嫌悪感しか見えなかった恵美の瞳が思い出される。



「私が、いいかげんだから、多分」

「ふぅん……言葉や表面に見えることだけが理由とは限らないけどな」



最初に仲違いした日のことを思い出すと、似合わない煙草とその横顔が浮かぶ。


少し、胸が詰まるような感情を呼び起こす空気。
何か、私に気付けていない、ことがあるんだろうか。


表に見えることだけが理由とは、限らない。
藤井さんの選んだ言葉に疑問が浮かぶ。



「藤井さん、何か知ってるんですか?」

「なんでだよ。今日で会うの二回目だろうが」



ですよね。



「感づいたことはあるけどな」



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