恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



テーブルの上で、携帯がバイブ音と一緒に滑ってる。


お風呂上がりで、ミネラルウォーターを飲みながら着信に気づいた私は、拾い上げて着信表示を見る。



「あれ」



また、母親かと思ったら笹倉だった。
最後にもう一口含んで飲みこんでから、ボタンを押す。



「もしもし?」

「あ、出た」

「出るよ。出ないと思ったならなんでかけるの」



まだ寝入るような時間でもないのに。
おかしな会話に、くすりと笑う。



「いや、もしかしたら一人じゃないかもな、と思ったからさ」



あぁ。そういうことか。


笹倉にしては、珍しいことを気にするな、と思った。
彼はいつも、私が誰と遊んでようと気にしない。



「だったら出ないけどね。誘ったら振られた」

「やっぱ誘ったのか」



ははっと短く笑う乾いた声。
振られてやんの、て付け足されて、速攻きってやろうかと思った。


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