カタオモイからはじまる恋

「爽…この子だーれ?」

甘いボイスに怖い目つきであたしを指差す女。そんな女にゾクッとしてしまった。

「俺の彼女だけど」

そう答えたのは、爽翔ではなく悠稀。

「ちがう。悠稀はあたしの彼氏じゃない。あたしは…っ」

あたしは爽翔の彼女と言えるわけでもなく…ただ、あたしは悠稀の同級生だと言いたかった。

でも最後まで言えなかった。

あたしの手首を掴む悠稀の力が強くて痛くて、これ以上なんも言うなよとでも言うかのように感じた。

「あなたは?」

あたしから視線を外さない女。

「俺の彼女つってんだろ」

「あれー?でも、あの子ちがうって」

「菜々帰るぞ」

やっと口を開いた爽翔。

「えーーー」

「どっからどう見ても俺ら邪魔だよ。喧嘩したっぽいし」

「わかったよ。」

リビングを後にする2人。
玄関で靴を履く音、ドアが閉まる音。
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