俺のこと好きになるの禁止だから!!
「ふぅ…。」
ヒカリにからかわれながらも図書室に着いた。
私の高校では図書室の利用者は半端なく多い。
その理由は放課後になると節電のため教室のクーラーがストップするためだ。
いつでも環境下整備されたクーラー使用可の自習室。
そのため利用する人が後を絶たず、毎日席が埋まっているのだ。
「…いっぱいだぁ…」
利用者はマジメに勉強する人ばかりで、人間がいるのか?ってくらい話声がしない。
聞こえてくるのは鉛筆の走る音だけだった。
―カリカリカリ―
みんな耳にイヤホンをしながら勉強している。
いたるところから聞こえる鉛筆音。
そこは、誰かがいるのに誰もいない空間だった。
「し、失礼します…」
なんか、自分みたいなのがそこにいるのが場違いな気がして
おそるおそる図書室に入ったんだ。
そして、図書室で待っているはずの神野君を探した。
「…あっ…」
図書室の片隅にある椅子で足を組み、本を読む彼の姿があった。
長い指で本のページをめくるその姿が大勢の生徒たちの中にいても一目でわかる雰囲気を持たせていた。
彼の目の前には誰かが置いたんだろうか机に荷物が置いてあり、時々邪魔だとでも言わんばかりに彼をにらむ上級生がいるように見えた。
すると、神野君と目があった。
「…。」
手招きする神野君。そんな彼に近づいた。
「何、読んでるの?」
じっと見つめる神野君は返事をする気配がなく、私の心を見定めているかのようだった。
「あ、あの…」
神野君の顔をこんなに近くで見たの初めて…。
女の子でも憧れるようなきれいな肌。
手にした本をやさしく扱っている長い指。
そして、いつまでもいつまでも見つめていたくなるような澄んだ瞳。
今から、勉強しようとしているのに、何を考えてるんだ私は。
何も言わない神野君、その顔は不機嫌そうに見え私は思わず彼に謝った。
「ご、ごめん。」