シルティアの魔術師
彼女は小さく溜め息をついた。


「つまり何も知らずに来るには危険過ぎる場所なの。…決して、好奇心で来ていいところじゃないわ。」


「…好奇心では、なかったんです。」


思わず言葉が口を突いて出た。
一度出だすと、言葉は止まる事を忘れてしまった。


「私は3年前に両親を亡くしています。それからはトレジャーハンターとして生計を立ててきましたが、最近は全然仕事が無くて…。そこで、この森の噂を聞いたんです。」


私は彼女の顔が直視出来ず、下を向いた。


「ただ私は…生きていく為のお金が欲しかった…。」


最後の方は、消え入るような声になっていた。
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