君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「…はい?」


なっ、何を言ってるの?


「まさかこんなに美人な方だとは思わなかったよ。今夜はいい夜になりそうだ」

……!!
ちょっとちょっと!
さすがの私もさっきの言葉の意味が分かったわよ。


「あの!田所部長!」


力を入れ、動きを制止し肩に回されていた腕をさり気なく外す。


「東野さんの手帳、お返し頂いてもよろしいでしょうか?」


本当は今すぐにでも逃げ出したいところだけど、東野さんの手帳を返してもらわないと。


「アハハハ!なに?櫻田さんは本気にしてたの?」



するとまるで私をバカにしたように笑う田所部長。


「営業マンが大事な手帳を忘れるわけないだろ?ただ君を呼び寄せる口実さ。東野部長は今日まで出張だって聞いたからね。今日がチャンスだと思ったんだ」


「チャンスって…」


思わず顔が引きつる。


「櫻田さんだって理解した上で来たんだろう?…こうなることをね」


そう言うとまた田所部長は私の肩に腕を回す。

そして私の耳元でそっと囁いた。


「君のためにスイートを取ったんだ。恥をかかせないでくれるよね?」


そう言うとまたゆっくりと歩き出す。
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