君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
あぁ。私はなんてバカなんだろう。

そうだよね。東野さんが大切な手帳を忘れて、今日まで気付かないなんてことあるわけないのに―…。


さっきまでとは違い、身体に力が入らず、ただ田所部長に引きずられるまま、エレベーターホールへと向かう。

「そうそう。言う通りにしてくれ。大丈夫、痛い思いはさせないか―…。おいおい!子供じゃないんだし泣くことないだろ!?」


えっ…?泣く?


いつの間にか無意識のうちに涙が出てしまっていたようだ。


私の突然の涙に最初は戸惑う田所部長だったが、次第にその表情は笑みに変わる。



「まぁ…泣く女を抱くのもいいな」


別になんだっていい。
私が泣いたのは、自分の間抜けさに呆れて。だってそうでしょ?
東野さんの秘書のくせして、東野さんのこと何も理解していなかったんだから。
秘書だったら分かるはずよね?東野さんの性格上、完璧なんだもの。営業マンが手帳を忘れるわけないのにさ。
でも―…ただ私、東野さんの役に立ちたかった。

ただそれだけだった。


なのに全然ダメ。空回りばっかりだし。現に今、こんな目に合ってるし。


「さぁ、行こう」


エレベーターのドアが開き、私の肩に力を入れる田所部長。
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