君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
私の腕を掴んだまま、鋭い視線を送る東野さんの瞳に、私は身動きが取れなくなってしまった。


「櫻田、お前自分が今、どんな現状にいたのか理解しているのか?」


そう言うと東野さんは私の腕を掴む力を強める。


「たまたま俺が間に合ったから良かったものの…。もし間に合わなかったら、あいつのエサになってたんだぞ!」


いつもに増してきつく話す東野さんに、思わず涙が溢れてしまった。


「…ごめっ…なさい…」


ごめんなさい、東野さん。

私なんかのために急いで来てくれたんでしょ?

いつも完璧な東野さんが息を切らして髪を乱して…。

柄にもなく汗なんてかいて。

「ったく!…泣けばいいと思いやがって…!」


そう言うと東野さんは、私を掴んでいた腕を離し、大きな溜め息を漏らす。


どう思われたっていい。

だって東野さんは私のために来てくれたんでしょ?

この信じられない現実に嬉しすぎて、涙が出てしまう。


「櫻田。取り敢えず泣くのはやめてくれるか?でないと俺、櫻田を泣かす悪い上司になっちまうだろ?」

「…へ?」


意味が分からず東野さんを見つめると、東野さんは周囲を指差した。
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