君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そう言うと、東野さんは困ったように笑う。
「ちゃんと櫻田のことは信頼してるから。だから今日みたいな無茶はするな」
東野さん…。
ヤバイ。涙が出る。
慌てて上を見るも、涙が溢れてきてしまった。
だけどこんな姿を東野さんに気付かれたくなくて、顔を背ける。
「さっきの田所部長、女好きで有名なんだ」
「えっ…?」
「さっきのホテルが田所部長の作戦決行場。櫻田みたいな手口で騙されて、エサにされる女が後をたたないんだ」
「そんな…」
酷い。
「田所部長だけじゃないさ。残念だけどそんな奴は沢山いる。接待だと言って自分の秘書を差し出すバカな営業マンもいるくらいさ」
「………」
信じられない。そんなことで契約を取っているっていうの?
「だからだよ、櫻田」
東野さんを見ると、自然とぶつかり合う視線。
「だから櫻田を営業に連れて行かなかった。お前なんて飢えた雄たちの餌食になるのは、目に見えていたからな」
「餌食って…」
「現にそうだろ?結局犠牲になるのは女なんだ。…いつもな」
…?東野さん…?
「まぁ、だからだ。俺が櫻田を営業に連れて行かなかった理由」