君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
なんだか幸先がいいじゃない!
この調子で仕事も東野さんの足を引っ張らないように頑張らなくちゃ!

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「わざわざありがとうございます。ご丁寧に遠いところから来て頂いて。おたくと契約してよかったですよ」


「え...?」


「今時ないですよ。こちらからお願いしてやっと契約して頂けたのに、わざわざ部長のあなたがこうして来て頂けるなんて」


あれ?ちょっと待って。聞いていた話と違うわよね。確か大きな商談で相手も難しそうだからってことで、東野さんがご指名されたのよね?


「いやー、出来れば今後も末永くよろしくお願いします」


「えっ、えぇ。こちらこそ」


さすがの東野さんも今の状況に戸惑っている様子。


それからは当たり障りのない世間話をしたり、今後について話したりして、とくに何もすることなく会社を後にした。



「櫻田。悪いけどちょっと待っててくれ」


「はい、分かりました」



きっと副社長に電話よね?

近くのベンチに腰掛け、気が緩み思わず溜息が漏れる。


けっこう意気込んで来たんだけどな。
契約も終わったしきっとこのままトンボ帰りね。
ちょっとくらい自由な時間があって東野さんと食事くらいは一緒できるかしらって、淡い期待を抱いてしまっていたけど。
どうやら叶わぬ儚い夢のようね。

仕事第一の東野さんだもの。
契約が済んだなら、すぐ別の仕事に取り掛かるために帰るに決まってるわ。

まぁ、そんな東野さんが好きなんだけどね。


「櫻田」

「あっ、電話終わりましたか?」


あれ...?心無しか浮かない表情に見えるのは私だけ?

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