君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
50代前半といったところの医務室のおばちゃんは、笑うと目尻に皺が沢山できる。

「だって私、入社した時から東野君のこと知っていたけど、本当に驚いたのよ?女の人にじかに触れられた日には、医務室に駆け込んできてすぐに消毒をしていたのよ?」


「…………」


やだな…
今、まさに消毒しまくっている東野さんの姿が浮かぶよ。


他人が聞いたら、かなりあり得ない話だけど、それが彼だったらあり得てしまうから恐ろしい。


「そんな東野君が、あなたのことをお姫様抱っこして医務室へ駆け込んできたのよ」


「………へ?」


えっ…


おばちゃん…今、なんて言った?


「最初見たときは、さすがの私も思わず固まってしまったわよ」


そう言ってまた目尻に皺を沢山作って笑うおばちゃん。

悪いけどもう、そんなの冷静に見てられない。


だって…
だってさ!私の耳には『お姫様抱っこ』なんていう単語が飛び込んできたんだけど…


マッ、マジなんだよね?


つまり東野さんが私をお姫様抱っこ…


そのまま医務室…


お姫様抱っこ…


ヤバイ…

ヤバイ!!


「えぇ――!!?」
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