君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
今日、帰ってきたばかりで、ついさっきまで一緒にいたのに会いたいだなんて。


「重症だわ」


瞼を閉じると浮かぶのは、出張中、何度も見た東野さんの笑顔。

私はそのまま眠りに落ちていった。


――――――――――

――――――


「おっはよう、櫻田さん?」


「...おはよう」


次の日、出勤し更衣室へと行くと、待っていたのは妙に気持ち悪い笑顔の橘さんだった。


「どうだったのかしら?東野部長との三日間の出張は」


やっぱりこの質問なのね。

橘さんの質問には答えることなく、自分のロッカーへと行き、さっさと着替えをすませる。


「ちょっと櫻田さん!シカトするつもり?」


ロッカーの鍵を閉めて更衣室を後にすると、橘さんもついてくる。


「ちょっと櫻田さん?いい加減に答えてくれてもー...」


「だって橘さんに話したら全部藤原係長に筒抜けでしょ?」


「えっ!?」


「私だってバカじゃないわ。そう安安と個人情報を漏らさなくてよ?」


それに、あの時の素敵な東野さんは、私だけの秘密にしたいもの。

誰にも知られたくない。私だけの東野さんにしたい。


「あら、そうですか!櫻田さんってケチなのね」


「ケチ!?」


どこがよ!


「別にいいわ。どうせ櫻田さんのことだからたいした進展もなかったでしょうから」


「ちょっと、橘さん?」


「あら、タイミング良くエレベーターが来たわよ。乗りましょ?」


言い返そうとしたのに、言葉を遮られ、イライラか募る。

だけどそれ以上は言い返せず、渋々橘さんと同じエレベーターに乗り込む。
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