君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
怒りをぐっとこらえ、言葉を続ける。
「あの、それは冗談ですよね?」
「なんで昼間から冗談なんて言わなくちゃいけないんだ?」
「だって...!」
いやいや、落ち着いて考えたら私がバカだったわ。
藤原係長が知ってるはずないわよね。
それに、例え藤原係長が何かを知っていて聞いたとしても、何一つ今の状況が変わるわけないんだから。
「藤原係長、カフェオレごちそうさまでした」
一気に飲み干し、席を立つ。
「櫻田?」
「もう仕事に戻ります」
「ちょっ!待てよ」
私の対応が想定外だったのか、藤原係長は慌てて立ち上がり、私の腕を掴む。
「悪かったよ。ただ聞きたかったんだ。東野との出張はどうだったのか。...それに櫻田のことも」
「えっ?」
私のこと?
「前にも言ったよな?櫻田の応援してるって。お前には頑張ってほしいんだよ」
「藤原係長...」
「お前なら東野を変えられると思うんだ。...いや、変えてほしいんだ」
「それってどういう意味ですか?」
藤原係長は掴んでいた私の腕をゆっくりと離し、なぜか困ったように笑った。
「悪いけどそれは言えない」
「なんですか、それ。ここまで言われたら気になるじゃないですか」
こんな中途半端に話を終わりにするなんて。
「悪いな。ただ俺は櫻田なら、東野を変えられると思うんだ。これだけは言える。だから頑張れ」
「...ありがとうございます」
なんなのよ。いつもと違ってなにも言えないし、聞けなくなっちゃうじゃない。言えないことなら触れないで欲しかった。
「で?出張ではどうだったんだ?何かあったのか?」