君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
その言葉にガクッと身体中の力が抜けてしまった。


「どうだったんだ?もしかして何かあったのか?」


否定しないからか、より一層目を輝かせる藤原係長に、大きな溜め息が漏れる。


「橘さんにも言いましたが、残念ながらご希望されているような展開はありませんでした」


「...本当にか?」


「本当に!です!!」


「まぁ、そうだよな。あの東野だもんな。一緒に出張に行けただけでも拍手喝采もんだぜ」


やっと諦めてくれたのか、飲んだ缶をゴミ箱に捨てる藤原係長。


「そういうわけなので、失礼します」


「あぁ。まっ!なにかあったらいつでも相談しに来いよ?大歓迎だからさ」


「それはありがとうございます」


意外な言葉に驚いてしまった。

それと同時に嬉しさと申し訳なさが渦巻く。


こんなにも私の恋愛を応援してくれているんだもの。ただ同じ職場で友達でもない、いち部下の私に。

だけど、やっぱり出張先での東野さんは、私1人だけの秘密にしておきたい。

あんな素敵な笑顔を見せてくれるのは、私だけっていつまでも自惚れていたいの。

少しは東野さんの中で、私は特別な存在なんだって自惚れていたい。


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「櫻田、見合い来週末になった。先方の都合で場所は仙台に なったんだが、ついでにあっちで商談にとなってな。火曜まで戻らないから、その間は藤原のサポートを頼む」


「はっ、はい」


びっくりした。急になんの前触れもなく業務連絡のように言うものだから。


そっか。来週末に決まったのね。


もう相手がどんな人かとか、分かっているのかしら?...聞きたい。


けど、聞いたらやっぱりまずいわよね。仕事とは全く関係ない話だし。


書類に目を通す東野さんを、手帳越しにじっと見つめてしまった。


「櫻田、言いたいことがあるなら口に出してもらってもいいか?見られているのは不愉快だ」


ふっ、不愉快!?



「すっ、すみません!」


不愉快という言葉にショックを受けつつも、見つめていたのがバレていたことに、恥ずかしくなってしまった。



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