君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
医務室を飛び出してすぐに営業部へと向かうと、彼は既に退社したと言われた。


まだ出たばかりだから会社内にいるかもって言葉を信じて探しているけど…見つからない。


「ハァ、ハァ…やだ…やっぱりもう帰っちゃった?」

とうとうエントラスを抜け、歩道にまで出てしまった。

街を行き交う人達が通り過ぎるたびに私を見つめてくる。


「そうだよね…エレベーターの中でも言ってたじゃない」


今日は早く帰れそうだったのにって…

きっと足早に会社を出たに違いない。


大きなため息が漏れる。


もうまたパンプスを履く気にはなれず、両手に一足ずつ持ったまま、また会社の中へと戻っていく。


やだな、私…

なんだかカッコ悪い。


だってさ!

普通はこのタイミングで東野さんに会えるもんじゃない?

展開的にはきっとそうだったはず!!

……なのに会えなかった。


「まぁ…でも明日になればまた会えるよね」


全社員、受付を通って各部署に行くんだもの。

頑張って早く出社して何気ないふりして彼と会って…
それから彼に一言、お礼が言いたい。


……ん?なんか違うな。


私は本当にお礼が言いたいだけ?
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