君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
瞑っていた目を開けると、目の前には翔ちゃんの胸元。

「あっぶね。危機一髪」


頭上から降り注ぐ翔ちゃんの低い声、吐息。

昔から変わらないのに、なんでだろう。全てがまるで翔ちゃんじゃない、別の男性に感じてしまい、胸が苦しくなってしまった。


「菜々子、大丈夫か?」


ゆっくりと私の身体を離し、上から私を見つめる翔ちゃん。


「うっ、うん。ごめんね!迷惑掛けちゃって」



小さい頃からいつも一緒で、こんな風に近付いたり、ふざけあったり散々してきたのに、なぜか恥ずかしくなってしまい、慌てて翔ちゃんから離れた。



「いいよ。それよりトイレ行きたいんだろ?」


「えっ...わっ!しょっ、翔ちゃん!?」


なぜか急に翔ちゃんは私を抱き上げた。

俗に言うお姫様抱っこ状態。


突然の翔ちゃんの行為に私の頭の中は、パニック状態。


「重いから!自分で行けるし!!」


とにかく早く降ろして!


「暴れるなよ。それに重くないし、逆に軽すぎるくらいだよ。別に遠慮することないだろ?俺達、幼なじみじゃん」


「そうだけど...」


そんな話をしながらも、翔ちゃんは歩き出す。


そうだけど...。
なんでだろう?さっきから、私を見つめる翔ちゃんの目が、凄く優しくて。
恥ずかしい気持ちになってしまう。


「ほら、着いたから。早く行ってこい」


トイレの前に着き、ゆっくりと私を降ろす翔ちゃん。


「ありがとう」

一言お礼を言い、私はすぐにトイレの中へと入った。


それと同時に漏れる大きな溜め息。


何をやってるのかしら、私ってば。
なんでこんな緊張で心臓がバクバクいってるのかしら。
頭も痛いし、気持ち悪いし...。

トイレを済ませながら、ふとある疑問が思い上がる。


「あれ...?私、どうやって帰ってきたのかしら」



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