君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
たしか相田さんが、急に三人くらいに見え出して...。

うん。それから全く記憶にないわ。


「菜々子?まだ気持ち悪いのか?」


考え事をしていて、なかなかトイレから出ない私を心配してか、ドアの向こうから翔ちゃんが声を掛けてくれた。


「うん!今出るよ」


ドアを開けると翔ちゃんの姿。


「歩ける?まだ抱っこしていこうか?」


「なっ!だっ、大丈夫だから!」


もうあんな恥ずかしい思いはごめんだわ!


「...なんだか今日の翔ちゃん、やだ」


「えっ?」



「いつもと違くて、調子狂うよ」


いつも優しい翔ちゃん。確かにいつもと変わらない優しさだけど、なんて言えばいいのかしら。違う優しさに感じてしまうの。


「...調子狂うのはこっちだよ」



そっと呟いた翔ちゃんの言葉が聞き取れなかった。


何?なんて言ったの?


「ごめん、翔ちゃん聞こえなかった。なんて言ったの?」


「いや、たいしたことじゃないよ。」


「おー、菜々子起きたのか。大丈夫かよ」


「桜子!」


私達の声に気付いたのか、寝起きの桜子が眠そうに部屋から出てきた。


「昨日の記憶ないだろ?かなり酔ってたもんな」


そう言っていたずらっ子のように笑う桜子。


「そんなに私ってばヤバかった?どんな感じで帰ってきたの?」


「なんだよ、翔太から聞いてねぇの?愛しの彼が菜々子のこと、送り届けてくれたじゃん」


「...うそ」


東野さんが?


「初めて実物見たけどさ、なかなかいい男じゃん!」


血の気が一気に低く。


やだ...最悪。なに東野さんに迷惑掛けてるのよ。


「桜子!朝御飯出来てるから」


「おっ、おう。てかなんだよ翔太。急に大きな声出しやがって」


「別に普通だろ?...ただ菜々子、頭が痛いみたいだからな。な?」


「あっ、うん...」



翔ちゃん?


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