君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
ドアを開けると、いつもと変わらない営業部の光景。
「おはようございます」
「おはよう」
「藤原係長、おはようございます!」
「おう」
いつものようにみんなに挨拶をして奥へと進む。
すると見えてきた東野さんの姿。
「櫻田。さっきの気になるから、また後で休憩でな」
「無理です!」
背後からそっと囁く藤原係長に、私はバッサリと即答で答えた。
「いいや!気になるから絶対吐かせるから」
そう言い捨てると、藤原係長は自分のデスクへと行ってしまった。
悪いけど、絶対に話すものですか。何が悲しくて自分の醜態を暴露しなくちゃいけないのよ!
そんなことを考えながらも、私の歩くスピードは次第にゆっくりとなっていく。
視線の先には、いつものように電話片手に、パソコンを開きながら仕事をする東野さんの姿。
散々悩んだけど、普通が一番よね。普通に挨拶してさりげなく謝って...。うん。それが一番よね!
そう思い、また足を進める。
ちょうど東野さんの電話も終わった様子。
「東野さん、おはようございます」
いつものように挨拶をして、頭を下げる。
「...あぁ。おはよう」
返事が返ってきて、頭を上げると東野さんは書類に目を通していた。「あの、この間は大変ご迷惑を掛けてしまったようで。その、すみませんでした」
再度頭を下げる。
「いや、こっちこそ悪かったな。優の相手させちまって」
「いいえ!それは全然です!私も相田さんとお話しできて楽しめました」
東野さんの意外な話しも聞けたしね。
「ただ、その...間違って相田さんのお酒を飲んでからの記憶が全くなくて。東野さんには送って頂いたようで、本当にすみませんでした」
「...櫻田、覚えてないのか?」
なぜか私の言葉に驚いた表情の東野さん。