君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「えっ、えぇ。気付いたのは次の日の朝でした」


その言葉に東野さんは書類から私へと視線を移す。


「...本当に何も、か?」


「...?はい」


どうしたのかしら、東野さん。


はっ!!
もしかして私、何かやらかした!?


「すっ、すみません東野さん!私、何か東野さんに失礼なことをしてしまいましたか!?」


「いや、別にそんなことはないんだが。そうか、櫻田は覚えてないのか...」


どこか寂しそうに見えるのは私の気のせい?


「そうだ、悪いが見合いはキャンセルだ」


「えっ...」


「藤原についてくれと言ったが、悪いが通常業務で頼む。藤原には言っておくから」


「あっ、はい」


突然の話に頭がついていかない。

だって副社長が持ってきた縁談話よ?橘さんも言っていたけど、断ったらマズイんじゃないかしら。それか何かあったとか?


「今から出るから。準備して」


そうだ!今日は1日外だった!

でも待って。こんなモヤモヤしたままで、仕事なんて出来ないわよ。あれだけ嫌がりながらも受けるって言っていたのに、突然なんで?


「あの!すみません。気になるので聞いてもいいですか?」


「なんだ?もう出ないと間に合わないから間接にな」


前にも言ってたし。言いたいことがあるなら言えって。そりゃ私にとってはお見合いがなくなるのは、嬉しいに決まってるけど。
単純には喜べないわ。


「なんでお見合いキャンセルなんですか?」


そう聞くと、背広を着ていた東野さんの手が止まる。


「......」


なぜかすぐには答えてくれず。

そしてまた動き出し、ゆっくりと背広を着て、ボタンを閉めて身支度を整える東野さん。


「あの...東野さん?」
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