君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
俺の言葉に櫻田は驚いた表情。


やべ。何口走ってるんだ俺は。


「行くぞ」


動揺してる自分に気付かれたくなくて、俺は何事もなかったように直ぐ様車に乗り込む。


「あっ、はい!」


櫻田を助手席に乗せ、車を発進させる。


車内は勿論、会話などあるはずもなく、ただ音楽が静かに流れる。

気付かれぬよう櫻田を見ると、窓の外を見ていた。


女を助手席に乗せるのなんて、どれくらいぶりだろうか。


とにかく向こうでの注意事項だけ櫻田に伝える。


エスコートするなんてまっぴら御免だ。だが、それが社会のルール。男が女をエスコートするのは。


会場に到着すると櫻田は口をあんぐりさせ、驚いている様子。

そんなに驚くことか?しかし、普段では絶対見られない意外な櫻田の表情に、思わず吹き出しそうになる。

真面目で仕事もテキパキこなす櫻田。

こんな顔もするんだな。


「行くぞ」


櫻田の腰に腕を回す。


「歩幅を合わせろよ。少しでも俺には触れるな」


「...はい」


女には変わりない櫻田。
どうしても拒否反応が出てしまう。



「いいか、俺が来るまで絶対ここから動くなよ」


藤原の言葉を思い出し、釘をさす。

取り敢えず片っ端から取引先に挨拶を済ませる。

ふと、櫻田の方へと視線を向けると、取り皿に食べ物をこんもりと乗せ、美味しそうに食べる姿が飛び込んできた。


「プッ...」


「東野さん?どうされました?」


やべ。仕事中に何やってんだ俺は。


「いえ。失礼しました」


あり得ない失態だ。

早々に切り上げ、再度櫻田を見ると副社長秘書となにやら楽しそうに話していた。


「二人なら大丈夫か」


絡まれることもないだろう。

そう思い、また挨拶回りへと向かった。


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