君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そんな俺達の背後から突然聞こえてきた下品な声。


「待ちやがれ!俺にこんな恥ずかしい思いさせて、のこのこと帰れると思ってるのか!」

足取りフラフラな酔っ払い。
しかし、どこかで見たことがあるような...。

そんな俺の視線に気付いたのか、あっちも俺へと視線を向ける。


「はっ!どこかで見た顔だと思ったら、いけ好かねぇ部長さんじゃねぇかよ」


そうだ。確かこの人は...。


「ご無沙汰しております。三田社長」


そう言いながら頭を下げる。


そうだ。つい先日苦労して契約した会社の社長だ。


商談の時から態度が気に食わなかったが、酔っ払うとさらに手におえなくなるな。


「おいおい、まさかこの女、お前さんの秘書とか言うんじゃねぇだろうなぁ?」


この女って櫻田のことか?


「櫻田は自分の秘書ですが、何か?」


すると三田社長は笑い出し、俺や櫻田の悪口を言う始末。

櫻田には悪いが、こんな時は何も言わないのが一番。
別にどう思われたっていい。
会社にとって不利益になること以外しなければ。


「若いくせして口ばかりでかい!俺はお前みたいなのが、一番嫌いなんだよ!」


そう言うと三田社長は俺を押し退ける。

本当にどうしようもないな。この人は。

そんなことを思いながらも、俺はただ三田社長に頭を下げ続けた。

いきどころのない、うっぷんを酒の力を借りて俺にぶつけたいだけなんだろう。


「俺は今、最悪な気分なんだ。お前の秘書のおかげで散々な思いをしてな」


「えっ?」


櫻田が?
横にいる櫻田を見ると、俺とは視線を合わせようとはせず、ただ下を向いているだけだった。


「俺の誘いを断った挙げ句、ワインをかけられたんだ。部下の失態、どう責任とってくれるか?」


ワインをかけたって...櫻田が?

信じられない。


「櫻田...本当なのか?」


「...東野さん」


櫻田はそれ以上何も言わず。
< 185 / 411 >

この作品をシェア

pagetop