君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
仕事は嫌いじゃないが、多忙なスケジュールに思わず溜め息が漏れてしまう。

そんな時、ビジネス専用のケータイが鳴り出す。


相手を確認すると、副社長からだった。


「そろそろ副社長の耳に入る頃だとは思っていたが、見事にドンピシャだな」


変に緊張しながらも、通話ボタンを押す。


「お疲れ様です。東野です」


『悪いね、夜遅くに。今、大丈夫かな?』


「はい、大丈夫です」


『急で申し訳ないんだけど、明日戻ってきてもらえるかな?急用なんだ』

急用...。きっと三田社長の件だろうな。


「分かりました。朝一で戻り、すぐ社の方へ行きます」


『悪いね。話は戻ってきてからにするよ。お疲れ様』


「分かりました。失礼します」


副社長が電話を切ったのを確認し、電話を切る。


「...さて、どうしたものか」


電話越しでは分からないが、副社長はお怒りだろうか。

いくら穴埋めと契約したものの、社にイメージダウンを与えてしまったのも事実。


櫻田を庇いきれるだろうか。


ーーーーーーー

ーーー

次の日、朝一で新幹線の席を取り、お昼前には社へと戻ることが出来た。


戻ったことを副社長秘書の橘に伝えるも、副社長に来客中とのこと。
11時には大丈夫だろうから、櫻田と二人で副社長室に来てくれ。とのことだった。


直ぐ様、営業部へ向かうものの櫻田の姿が見えず。


「どこに行ったんだ?」


「東野部長!?お疲れ様です。あれ?確か出張は明日まででは...?」


確か新入社員の小山か?


「ちょっと急用でな。悪い、櫻田を見なかったか?」


「櫻田さんでしてたら、俺らにお茶を出してくれてたんで、給湯室だと思います」


お茶汲み、か。


「サンキュ」


小山に言われた給湯室へと向かう。

確かに櫻田には最初、お前の仕事はお茶汲みだと伝えた。

だが、それはあくまで櫻田がどんな人間だか知らなかったから。


給湯室へと入ると、なぜか櫻田は独り言をブツブツ言いながら、しゃがみこんでは頭を抱えていた。
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