君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「ん。確かに。参加費集める時、また声掛けるから」


「...藤原係長、もしかしなくても社内旅行委員なんですか?」


「ご名答。面倒だけどね。悪かったな、仕事中に」


「いいえ、お疲れ様です」


そっか。大変だな。

私も2年目に一度、社内旅行委員やったことあるけど、色々と大変なのよね。


他の社員の元へと参加の有無を確認して回る藤原係長を、思わず見つめてしまった。


あれ?
そういえば秘書課の社内旅行委員は誰だったかしら。


「櫻田、リストアップ終わったか?」


「わあっ!?」


急に視界に飛び込んできた東野さんに、驚きのあまり変な声を出してしまった。


「そんなに驚くことないだろ」


「すっ、すみません...」


まさか仕事中に、別のことを考えていてボーッとしてました。なんて言えないわ。


「で?終わったのか?」


「あっ、はい!」


引き出しから頼まれていた書類を取り出す。


「どれ...」


「これで...」


『これです』そう言いたかったのに言葉が続かなかった。

急に鼻をかすめるあの大好きな匂い。


目線だけ匂いの元へと送ると、すぐ近くに東野さんのお顔。


えっ、えっ、えぇー!?

ちょっ、ちょっと待って!東野さんの顔が物凄く近いんですが!!


私の背後からデスクにある書類を覗き見る東野さん。


「けっこういるんだな」


落ち着け私。こんなに近くにいるんだから。

心臓の音が東野さんに聞かれちゃうじゃない。


そっと深呼吸をし、平常心を装いながら東野さんの質問に答えていく。


目線は書類から一切動かすことなく。


「じゃ悪いが早急に頼むな」


「あっ、は...い」


自然と東野さんの方へと身体を向けてしまった。


一瞬、至近距離で東野さんと目が合う。


この距離感に気付かなかったのか、東野さんは驚いた表情を浮かべ、直ぐ様私から離れた。


「...わりぃ。頼む」


「はっ、はい」


うぅ。分かってはいるけど、そんな風にオーバーに離れられるとやっぱりへこむわね。
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