君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
大きなため息を漏らしながらも、また仕事へと取りかかった。
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「お先に失礼します」
残業している営業部のみんなに挨拶を済ませ、ゆっくりと秘書課へと戻る。
えっと、まだやることがあったわよね。
スケジュール帳を取り出し確認していると、前方からハイヒールの音が響き渡ってきた。
その音は驚くほど大きな音。
「いた!ちょっと櫻田さん!!」
聞き慣れた声に顔を上げると、その声の主は橘さんだった。
まるで猪のように私に向かって突進してきて、至近距離でピタッと止まる。
「おっ、お疲れ様。どうしたの?」
「どうしたじゃないわよ!聞いたんだけど、営業部の社内旅行委員が藤原さんだって話は本当なの!?」
「えっ、えぇ。そうみたいだけど...」
「やっぱり!」
そう言うと橘さんは私から離れ、項垂れる。
「それがどうしたの?何か問題でもあるの?」
そう尋ねると、橘さんは待ってました!と言わんばかりにまた至近距離で話始めてきた。
「あるに決まってるでしょ!そう分かっていたら、どんなに仕事が山積みになってても、引き受けたのに」
そう言いながら、本気で落ち込む橘さんを見て思わず笑ってしまった。
「ちょっと櫻田さん。なに笑ってるのよ」
「ごめんなさい。でも、全然悪い意味で笑ってるわけじゃないから」
なんかおかしくなってきちゃったのよね。
「だって私と橘さん、なんだか似ているんですもの」
「えっ?」
「恋愛に関してがね」
好きな人を思う気持ちも、恋愛に対する気持ちも...。
だからさっきも、ふと秘書課の社内旅行委員は誰だったかしらって考えてしまったのよ。
私も橘さんと同じ立場だったら、絶対同じ委員になりたかったって思うし。
「悪いけど、私は櫻田さんみたいに男の趣味は悪くないわよ」
「趣味の話じゃないわよ。それに趣味はいいほうだし」
いつもの嫌味を言っているけど、全然嫌な気持ちにはならない。
だって橘さんの顔を見たら、そんな気持ちにはならないわ。
「ねぇ、橘さんも仕事終わったんでしょ?なら、今から一緒に飲みに行かない?」
「櫻田さんの奢りなら行ってもいいわよ?」
「いーえ!!割勘で!って言うか今日のランチ代を返してほしいわ」