君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そんな橘さんの話に、思わず身体の力が抜けてしまった。


「でも良かったわ。毎年の楽しみがなくならなくて。じゃあお疲れ様」


言いたいことだけ行って去っていく橘さん。


「本当になんなのよ」


疲れがどっと押し寄せてくる。


「早く帰ろう」


呟き、ゆっくりと会社を後にする。


帰る途中、桜子からメールがあり、なんでも恒例の飲み会があるから遅くなるとのこと。


きっと翔ちゃんも遅いだろう、と思い帰り道に近くのスーパーへと寄った。


今の時間ならちょうどお惣菜やお弁当が値引きになる時間。


それを狙ってお総菜売り場へと急ぐ。


「...あれ?」


急いで行ったものの、ほとんどの商品が売れてしまった後だった。


「ショック...。ご飯どうしよう」


買い物かごを片手にお総菜売り場で項垂れる私。


材料を買って作ればいいだけの話なんだけど、疲れきった今の私には過酷労働すぎる。


「仕方ない。カップ麺で我慢するか」


そのままカップ麺が売っている売り場へと向かおうとした時、


「あれ...菜々子?」


急に名前を呼ばれ、声がした方へと振り返ると、そこにはスーツ姿の翔ちゃんの姿があった。


「翔ちゃん!」


「やっぱり菜々子だ。珍しいじゃん。菜々子がスーパーにいるなんて」


「失礼な。私だってスーパーくらい行くわよ」


手に持っている買い物かごの中を覗いてみると、野菜や魚や肉などの食材。


「...もしかしなくても、今晩のご飯?」


「そう。最近忙しくてあまり手の込んだもの作れなかったからさ。久し振りに料理しようと思って。菜々子も食べるか?」


「食べる!!」


願ってもないお言葉に、思わず即答してしまった。


「プッ。アハハハ!菜々子、どんだけ腹すかしてたんだよ」
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