君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そう言って無邪気に笑う翔ちゃん。


久し振りに見た。
翔ちゃんの笑顔を。


「...菜々子?」


「あっ、ごめんごめん。あまりにお腹が空いててボーッとしちゃった」


やだやだ、気を付けないと。

やっと翔ちゃんと普通に話せているんだから。


「じゃあ菜々子の好きなもの作ってやるよ」


「本当に?やった!...ついでにアイスとお菓子も買ってくれる?」


「いいよ。どーせ給料日前でピンチなんだろ?」


ーー!!


「図星?」


得意気な笑みを浮かべて、そう話す翔ちゃん。


「よく分かったね」


最近まともに会話してないのに。


「当たり前だろ?幼馴染みなんだから。買うなら早く選んでこいよ。帰ったら作らなくちゃいけないし」


「あっ、うん!」


そうだよね。
私達三人は昔からの幼馴染みで、ずっと一緒に過ごしてきて...。

結論が出ているのに、なんでこんなにも腑に落ちないんだろう。

答えにいつまでも疑問を持っているんだろう。


ーーーーーーー

ーーー


「ごちそうさまでした!美味しかったぁ」


「そりゃよかった」


あれから買い物を済ませ、翔ちゃんが作ってくれた夕食を二人で食べた。

相変わらず翔ちゃんの作るご飯は美味しい。


「苦しそうだな。菜々子は座ってていいよ」


そう言いながら立ち上がり、食器を片付け始めた翔ちゃん。


「翔ちゃんいいよ!片付けくらい私がやるから!」


作ってもらった上に後片付けまでやらせるわけにはいかないよ。


「いいよ。大丈夫だから」


そう言って食器を持ち、台所に運ぶ翔ちゃん。

慌てて残りの食器を持ち、後を追う。


「翔ちゃん本当に私がやるからいいよ」


食器を流し台に入れようとした時、思わず手が滑ってしまい床に落としてしまった。


食器が割れる音と同時に床に食器の破片が散らばる。


「ごめん!」


私ってば何やってんのよ。

しゃがみ込み、直ぐ様割れた食器を片付けようと、手を出した。


「いたっ」


「バカ菜々子!切るに決まってんだろ」


「えっ...」


私と同じようにしゃがみ込み、なんの迷いもなく私の切った指先をそっと口に運ぶ翔ちゃん。


一瞬の出来事だった。
だけど私にはとても長い時間に感じてしまった。



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