君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
正直、二人っきりじゃないことに安心した。
「菜々子朝御飯食べる時間ある?」
「うん!」
翔ちゃんから目玉焼きとトーストの乗ったお皿を受け取り、席につく。
「桜子は?」
「うー...。コーヒーだけもらう。吐きそう」
フラフラとした足取りで椅子に腰掛ける桜子。
「お前はまたどれだけ飲んだんだ?今日も仕事だって分かってるんだったら、加減して飲めよな。もう若くないんだから」
そう言いながらも、桜子にコーヒーを淹れてあげる翔ちゃん。
「わーってるよ。つい楽しんじまってよ。なぁ翔太、わりぃんだけど今日車で会社まで送ってくんねぇ?」
「はぁ?」
「だーってよぉ!こんな日に満員電車に揺られて行けるか。すぐげろっぱしそう」
「ちょっと桜子!私食べてるんだけど!」
そんな時に吐く話しなんて聞きたくない。
「しょうがないな。送ってやるよ」
「わーい!サンキュー」
翔ちゃんは優しいなぁ。
そんなことを思いながらも、トーストをかじる。
「菜々子もついでに乗ってくか?」
「えっ?」
「そうだよ。菜々子も乗せてってもらえよ」
「あー...。ううん!私は大丈夫!電車で行くよ」
「そうか?」
「なんだよ、楽なのによ」
そうだよね。
なんで断っちゃったかな。別に普通に喜んで乗せていってもらえばよかったのに...。
コーヒーを飲みながら、そんなことを考えていると、ふと感じる桜子の視線。
「なっ、何?」
「いや、なんか菜々子変じゃね?いつものノリだったら、一緒に乗っていくじゃん」
「えっ!!そう?まぁ、今日は電車で行きたい気分なのよ。ごちそうさまでした!行ってきます」
残りのコーヒーを一気に飲み干し、食器を台所に運んで鞄片手に慌てて家を出た。
そのまま駆け足で最寄り駅へと向かう。
「あーもう!私ってば何やってんのよ」