君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
あれだけ普通にって思ってたのに、全然出来てないじゃん。


「とりあえず会社に行こう」


自己嫌悪に陥りながら、ゆっくりとした足取りで改札を抜けた。


毎度のことながら、通勤ラッシュのこの時間は辛い。

最初に東京に来たときには、絶対慣れないって思ってたんだけど、今では慣れたもの。


少しの空間を確保してどうにか押されず乗れるまでになったわ。

若い頃の私には、今の私なんて全く想像出来ないんだろうな。


ーーーーーー

ーーー


満員電車を降り、会社の最寄り駅の改札を抜ける。

周辺には大手会社のビルが立ち並ぶオフィス街。
この時間は沢山のビジネスマンやOL達で溢れている。

人波に流されるように会社へと向かう。


「...あれ?」


進行方向に見えたのは、見覚えのある車。

黒のスカイライン。


ナンバーを見ると、やっぱり翔ちゃんの車だった。


駆け足で車へと向かい、車内を覗き込むと、やっぱり翔ちゃんが乗っていた。

パソコンを見ている翔ちゃんは私の存在に気付いていない。


きっと私に用事があって来たんだよね?

そっとドアをノックすると、すぐに気付いてくれて窓を開けてくれた。


「どうしたの?会社、間に合うの?」


翔ちゃんの勤める会社は、ここからだいぶ離れている。


「おいおい、そんな口聞いていいのか?これ」


「あっ...ケータイ!」


翔ちゃんが手にしていたのは、私のケータイ。


「やだ、私忘れちゃったんだ」


「気付かなかったのか?」


「うん...。ごめんね、ありがとう。助かった」


翔ちゃんからケータイを受け取る。


「どういたしまして。ケータイないと大変だってよく分かるから」


本当に翔ちゃんって昔から気が利いて優しくて。全然変わらないね。


「じゃ行くな」


「うん。本当にありがとうね!気を付けてね」


「あぁ。またな」


車から離れると、翔ちゃんはすぐに車を発進させ行ってしまった。

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