君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
しばらくの間、私はその場から動けずにいた。
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「櫻田、これ明後日のしおり。一応部屋割りにちゃんと名前があるか確認してくれる?」
「ありがとうございます」
我が社の社内旅行には、まるで小学生の遠足のしおりみたいな、社内旅行のしおりが存在する。
一年目にしおりをもらった時は、思わず吹き出しそうになっちゃったけど、これが意外と役に立つのよね。
受け取ったしおりの部屋割りを見る。
「...えっ!!私、また橘さんと部屋が一緒なんですか?」
「その方がいいんだろ?仲良いじゃん」
仲良いって...。
「世間からは私と橘さん、そんな風に見られているんですか?」
一年目から毎年毎年同じ部屋だったのよね。
「逆に聞きたいけど。仲悪いの?」
「いや...。悪いってわけではないと思うんですけど...」
「なら一緒で問題なしだな」
「...はい」
また夜な夜な言い合いをしながら、二泊を橘さんと共にするのか。
「あっ、藤原係長は東野さんと同じ部屋なんですね」
「あぁ。俺ら仲良しだから」
「...!!」
まるで小学生みたいな意地悪な笑みを浮かべ、藤原係長は行ってしまった。
「仲良しって...」
あんなこと言ってるから一部の女子社員の間で二人は禁断の関係なんじゃないかって噂されるのよ。
そんなことを考えながらも、時間をふと見ると、外回りに行く時間が近付いていた。
「早く準備しないと」
慌てて資料や手帳などの必要なものを鞄に詰め込み、席を立つ。
最後に化粧室で化粧直しをして地下の駐車場へと向かった。
まだ東野さんの姿はなく、車の前で立ち止まる。
「副社長との打ち合わせ、長引いているのかな?」
ドアに寄りかかり、腕時計を確認する。
まだ約束の5分前。
「...社内旅行、か」
子供みたいって思われるかもしれないけど、東野さんも参加するはじめての社内旅行、ちょっと期待してる自分がいる。
だって出張の時だって東野さんとあんなに素敵な時間を過ごせたんだもの。
嫌でも期待しちゃう。