君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「あのね小山君、この際だからハッキリと言わせてもらうけど、私と藤原係長は本当になんでもないからね。お互い好意なんていう感情はまったくないから」
「えぇー。だって仲良しじゃないですか」
仲良しって...。
「どう見たらそうなるのよ。とにかく!本当になんでもないんだから、これ以上変な話はしないでね」
「...はい。じゃあ東野部長とは!?」
「えっ...」
東野さんの名前が上がっただけなのに、ドキッとしてしまう。
そんな私の心情を小山君は見逃さなかった。
「あー!!なるほど!本命は東野部長なんですね!」
「ちょっ、ちょっと!声が大きいわよ!」
周りに会社の人がいるんだから!
「照れてる!図星っすね」
まるで罠にはまってしまったよう。
言い返す言葉が見つからない。
変に言い訳しても、余計に怪しまれそうだから。
「私泳いでくる!」
このままここにずっといたら、根掘り葉掘り聞かれそうだわ。
「ちょっと櫻田さん!逃げないで下さいよ!」
逃げるに決まってるじゃない!
背後から聞こえてくる声には一度も振り返ることなく、海辺へと足を進める。
ビーチには沢山の人で溢れていて、みんなそれぞれ楽しそうに海を満喫していた。
「...いいなぁ」
私もいつか東野さんとプライベートであんな風に海に来て遊びたいわ。
「...いやいや、想像出来ない」
ちょっと妄想してみたけど、全く想像出来なかったわ。
だって女嫌いな彼よ?
誰かに彼の攻略法を教えてほしいくらいだわ。
ふと海辺を見ると、楽しそうに浮き輪に掴まりながら遊ぶカップルが目に入る。
「本当に羨ましい」
毎日仕事に追われていて、こうやって沢山の人達が集まる場所来ると、つい思い知らされてしまう。