君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
今のって...?


夢なのか、現実の世界なのか分からない。

だけど東野さんから視線を反らせない。

だって東野さんも私をじっと見つめていて、その瞳にただ視線を奪われてしまっていたから...。


「言っておくけど、夢じゃねぇからな?」


「えっ、あっ、はい!」

薄暗い静かな部屋の中、東野さんと二人。これは現実?

「...櫻田、俺が女嫌いだってことは知ってるよな?」


すると、次の瞬間、東野さんが私の右手にそっと触れた。



「とっ、東野さん!?」


てっ、手が!!


「...不思議だろ?櫻田には触れても平気なんだ。それに、いつも気になって仕方ない」


「東野さん...?」



「櫻田が他の男と話していたり、 触れられたりされるのが嫌なんだ」


えっ...。ちょっと待って。そんな台詞言われたら、嫌でも勘違いしちゃうじゃない。


薄暗い部屋の中、至近距離で見つめられて手を握られて...。
まるでドラマのようなシチュエーション。

私はただ、次の東野さんの言葉を待つ。



「...なぁ、どうしようもなく好きみたいなんだけど...。どうしたらいい?」




「...え?」


「だから、櫻田のことが好きなんだけど」


「...嘘」


好き...?


誰が?
東野さんが?

私は東野さんが大好きで大好きで...。
でもさっき東野さんはなんて言った?


「おい、人がこんな恥ずかしいこと言ってるっていうのに、嘘はねぇだろ?」


そう言って笑う東野さんを見て、じんわりと現実なんだと実感してきた。


好き...。
たった二文字のこの言葉がどんなに欲しかった?


「櫻田...?」


色々な思いが込み上げてきてしまって、いつの間にか涙が溢れてきてしまった。


ずっと東野さんが大好きで大好きで...。
でもずっと気持ちは一方通行で。


何度も夢を見た。

何度も願ってしまった。


いつか何の許可もなく東野さんに抱きつきたいって。


『好き』ってことは抱きついてもいいの?。


「おい、櫻田...?」


泣き止まない私を心配してか、東野さんの顔が近付く。


確かめたくて、私はそっと東野さんの胸元に顔を埋めた。


「櫻田...?」


「いっ、嫌ですか?...いつもみたいにすぐに洋服を捨てて、消毒しちゃいますか?」


自分でも驚くくらいの大胆な行動。

でも確かめたい。
本当に東野さんも私のこと、好きなのか。


緊張が高まる中、東野さんの言葉を待つ。

すると頭上から優しい声が注がれた。


< 248 / 411 >

この作品をシェア

pagetop