君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
だけど私はそんな東野さんの辛い過去を知らない。



「櫻田?」


「あっ、ごめんなさい!ぼーっとしちゃって...」


「あらやだ。早速幸せボケ?」


「べっ、別にそんなわけじゃ...!」


「アハハ!お前ら本当に仲がいいんだな」


「「仲良くありません!!」」


「ほら」


思わず橘さんと顔を見合わせる。


「とにかく確かに伝えたからな。悪いけど亜希子借りるな」


「えっ?」


「ふっ、藤原さん!?」


そう言うと藤原係長は橘さんの腕を掴み、さっさと行ってしまった。


「....うわぁ」


見てるこっちが恥ずかしくなるわ。

でも、羨ましいな。

だって好きな人に名前で呼ばれるなんて...。


私もいつか東野さんに『菜々子』って呼んでもらえる日がくるのかしら。


「いやいやいや!!」


想像しただけで恥ずかしいわ!


「さて...」


妄想を終えたところで、これからどうしようかしら。

東野さんもいないし、橘さんは藤原係長とラブラブ中だし。
自由時間が憎い。


「ショッピングでもしようかな?」


そう思い、出掛けるため部屋へと戻った。


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ーーーー


結局二日目は営業部のみんなと偶然会って、ショッピングを楽しんだ。


そしてこの日の夜、橘さんは部屋には戻ってこなかった。


変な妄想と、寂しい思いを抱えながら眠りについた。


ーーーーーーー

ーーー


「はー...。なんだか疲れた」


帰りのバスの中、つい独り言を呟いてしまう。

それもそのはず。行きのバスの中では隣にいた橘さんが帰りのバスでは隣にいない。


どれだけラブラブなのかしら。


まるで今まで我慢してきた分を爆発したかのように、藤原係長は橘さんにべったり。

さすがの小山君や営業部のみんなも二人の仲に気付いたみたいだし。


おかげで、いまだに変な噂を信じてるみんなに、私が失恋したと哀れみの視線を送られたわ。


「だけどまぁ...」


それでもやっぱり言わずにはいられない。

『おめでとう、よかったね』って。


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