君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「会いたいなぁ」


私、東野さんの仕事用のケータイ番号しか知らないのよね。

プライベート用の番号もアドレスも知らない。


藤原係長に聞けばいいだけの問題だけど、やっぱり直接本人から聞きたい。


きっと今も東野さんは忙しく仕事をしているんだろうな...。


正直、全然実感が沸かない。

あの東野さんも、私と同じ気持ちになってくれたなんて。


どうしよう。もし、旅行から帰ったら大掛かりなドッキリでした。なんてオチが待っていたら...。


「ショックで倒れそうだわ」


一人で色々な思いを巡らせていると、あっという間に会社に到着した。


「よいしょっと!」


お土産で重さを増した鞄を降ろす。


桜子用のお酒のお土産のおかげね。この重さは。


「おい、櫻田ー!」


ふいに呼ばれ、声がした方へと視線を向けるとそこには藤原係長と橘さんの姿が。


「お疲れさん。どう?このあと三人で一杯行かないか?」


冗談!!


「慎んでお断りさせて頂きます」


これ以上二人のラブラブぶりを見て、自分が惨めになんてなりたくないわ。


「つれないな。色々と櫻田と東野の馴れ初めでも聞きたかったのに」


「余計にお断りします」


「そっか。じゃ仕方ない。亜希子、二人で飲みにでも行くか?」


「はい!」


あ~あ。ラブラブですこと!


「それじゃ櫻田、また明日な」


「お疲れ様櫻田さん。またね」


「お疲れ様でした」


仲良さそうに肩を寄せ合いながら、人混みの中へと消えていった。


「さて、帰ろうかな」


荷物も重いし、今から帰ればまだラッシュには巻き込まれない時間帯だし。


重い荷物を持ち上げ、数メートル歩いた時、鞄に入っているケータイが鳴り出した。


「誰かしら」


立ち止まり、慌ててケータイを取り出す。

そして着信の相手を確認するも、登録されていない知らない番号からだった。


疑問に思いながらも、鳴り止まない電話に恐る恐る出る。


「...もしもし?」
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