君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
だってそうでしょ?
あんな女嫌いな彼が、女の私を抱き締めてくれて触れてくれて。
それにこんなにも幸せになれる言葉をくれるなんて。


「櫻田?」


「それは私の台詞です。ずっとバスの中で考えてました。夢のようで、もしかしたら戻ってきたらドッキリでした。なんてオチが待っていたら...って」


「ドッキリ?」


「はい。藤原係長や橘さん、みんなを巻き込んだ大掛かりな」


真面目な話をしてるっていうのに、東野さんってば急に大きな声を出して笑い出した。


「...私、本気で考えてしまったんですけど。そんな笑い事じゃありませんよ」


いまだに笑っている東野さん。


「わりぃ。...だけど、こんなにも笑わしてくれるのは、櫻田だけだよ」


「えっ?」


さっきとは違い、真剣な面持ちで私を見つめる東野さん。


「自分でも驚くくらい、櫻田には色々な感情を引き出される。だからそんな悩み持たないでほしい。櫻田が思ってる以上に、櫻田のことを思ってるから...」


「東野さん...」


たまらず自分から東野さんの胸の中へと飛び込んでしまった。


そんな私を、そっと抱き締めてくれた。


「安心したよ。...大丈夫だって」


目を閉じると、涙が頬をつたう。


どれくらいの時間、東野さんの胸の中にいただろうか。


いつの間にか辺りは薄暗くなっていた。


「櫻田そろそろ帰るか」


「えっ?」


「疲れただろ?それに明日も仕事だ。支障をきたすわけにはいかないだろ?」


「...はい」


ゆっくりと東野さんから離される。


...もう少し、こうしていたかったな。なんて、本人には絶対言えないけど。


「そんな顔されると、色々とまずいんだけど」


急に近付く東野さんの顔。


キスされた。と気付いたのは、唇が離れてから。


「今日は俺も電車なんだ。...送る。荷物持ってくるから、外で待ってて」


「は...い」


返事を返すのがやっとだった。


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