君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
どうして東野さんは急にそんなことを言うの?

さっき、一緒に帰ろうって。送っていくって言ってくれたじゃない。


なのになんで?


「じゃあそんなわけなんで、菜々子帰ろう」


そう言って翔ちゃんはさっさと私の荷物を抱え、車の方へと行ってしまった。


「東野さん...」


そっと呟き、東野さんを見つめると東野さんは私に背を向けていた。


「帰るところが一緒なんだ。その方が櫻田には都合がいいだろ?」


そんな...。


「でもっ...!」


私は東野さんと一緒にいたいのに。


「明日も早い。早く帰って明日に備えるように。...お疲れ様」


一度もこっちを見ることもなく、東野さんは行ってしまった。

そして、あっという間に人混みに紛れて分からなくなってしまった。



「...お疲れ様でした」


やっと出た言葉。

いつも当たり前のように言っていた言葉なのに、なんで簡単に出てこなかったんだろう。


「菜々子、荷物も積んだし帰ろうか」


「...うん」


ここで悲しい顔なんてしたらダメ。

いつものように振る舞わないと。


そう自分に言い聞かせ、車に乗り込む。


「楽しかったか?社内旅行は」


「うん、いいリフレッシュになった!」


「そっか...」


ダメだ。さっきからお互い色々な話題を振っているっていうのに、全然会話が進まない 。


「...今日のご飯は、手巻き寿司にしようと思うんだけど..。いいよな?」


「手巻き寿司?」
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