君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「美味しい!!」


「だろ?」


藤原係長に連れられてきたのは、お世辞にもきれいとは言えない小さな定食屋さんで、昼時だというのに客も少なく。


定食が出てくるまでは半信半疑だったけど、食べてみてびっくり。


「ここはさ、高校時代から東野とよく通っていたんだ」


「東野さんと、ですか?」


「あぁ。安くて美味かったしな。今でも時間が合えばたまに二人で来るんだぜ」


「へぇー。そうなんですか」


ここに東野さんも来てるんだ。


「...で?どうよ、あの東野の彼女になった気分は」


「いきなりですね。...そりゃまだまだ実感ないですよ」


現にたった数日しか経ってないしね。


「でも本当にたいした奴だよ、櫻田は。あの東野を落としたんだから」


「.......」


「東野からさ、色々聞いた?」


「色々というのは、女嫌いになった過去、ですか?」


「そう」

「...聞いてません、本人からは。少し相田さんから聞いただけです」


本当は気になるけど、こればかりは本人以外からは聞けないわよね。


「そうか...。まぁ、きっとそのうち東野から話してくれると思うぜ」


そう言いながら箸をすすめる藤原係長。


「そんなに言えないほど辛い過去なんですか?」


「えっ?」


相田さんから聞いた感じだと、昔はやんちゃしてた東野さんが初めて本気で好きになった人で...。


「そんなに好きだった人に辛いことをされたんですか?」


だってそうでしょ?
女嫌いになるほどだなんて...。



「櫻田...」


私の名前を呟いた瞬間、ハッとし、慌てて口を開いた。


「って言ってもこればかりは、本人に聞かないとですよね!それより!藤原係長の話こそ聞かせて下さいよ!いつから橘さんのことが好きだったんですか?」


「あー...そうだな。亜希子のことは前から好きだったよ」


「...へ?」


今なんて?


「だから前から好きだったって。ただ、タイミングがなかっただけ」


「...えぇー!?本当に!?」


「バカ。声が大きい」


「だっ、だって!」


前から好きだったなんて...。
そんなこと聞かされたら、驚くに決まってるじゃない。


「なんで早く橘さんに言ってあげなかったんですか?」


絶対橘さんの気持ちを知っていたわよね。


「だからタイミングがなかったんだって」


「えぇー。それだけですか?それにしても、橘さんが心変わりしたらとか考えなかったんですか?」



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