君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そう聞くと藤原係長は即答で答えた。


「それはないね。亜希子は」


うっわぁー...。
すっごい自信なのね。


「まぁ、強いて言えば櫻田と亜希子仲良しだろ?なんかこっちにきた東野見て、二人がうまくいきそうだったからさ。だったらこっちも、みたいな?」



「なんですかそれは!」


そんな『ついでに』みたいな。


「でもあの時の東野の姿を、櫻田にも見せてあげたかったぜ」


えっ?


「櫻田が倒れたって言ったらすっげぇ血相変えてさ。...あんなに焦った東野を見たの久し振りだった。だから櫻田は自信持っていいと思うよ。ちゃんと好かれてるって」


「藤原係長...」


あまりに自信満々に言うものだから、信じちゃうじゃない。


「そろそろ戻るか。休憩時間終わる」


そう言って伝票片手に立ち上がる藤原係長。


「ごちそうさまです」


慌てて後を追う。


「どういたしまして。色々話せてよかったよ。今度は東野と一緒に来たら?」


「はい!」


ーーーーーーー

ーーーー


「...連絡なし、か」


仕事が終わり、ロッカー室でケータイを確認するも、東野さんからの連絡はなかった。


きっとまだ仕事中なんだろうな、

ちょっと残業して待ってみたりしたものの、東野さんが帰ってくることはなく。

時計を見ると、19時を回っていた。


「掛けたら迷惑だよね」


番号は知っているけど、さすがに自分から掛ける勇気がない。

ケータイを握りしめたまま、溜め息を漏らしつつも鞄を持ち、ロッカー室を後にする。


私、きっと本当に自信がないんだろうな。

当たり前のことだけど、私が知らない東野さんを知っている人がいる。

そんなの、これからお互い知っていけばいいじゃん!ってみんなは言うかもしれないけど...。


なんて言えばいいんだろう。

臆病になってるって言うのかな?
5年以上片想いしてて。片想いが日常で...。

急に片想いが終わったって言っても、やっぱりすぐには受け入れられないわよね。


「...な~んて、言い訳してみたりして」


19時過ぎのオフィスには、ほとんど人がおらず。

私の足音だけが響き渡る。


そしてエントランスの階段を降りている時、ふと足が止まる。



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