君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

ここで昨日、東野さんとあんな恥ずかしいことしちゃったのよね...。


一人で思い出し、恥ずかしくなってしまった。


それに、懐かしい思い出もある。

エレベーターの中で閉じ込められた時、お礼が言いたくて探し回って...。
でも結局会えなくて、諦めて帰ろうとこの階段を降りている時、ちょうど反対側から東野さんが来て。


「あの時は、すれ違われちゃったな」


思い出すと、笑える。


そんな人を好きになって、思いが通じ合えて...。
なんか不思議。


「...帰ろう!」


また歩き出し、私の足音が響き渡る。


ここでまた東野さんと会えたら、ドラマみたいで素敵なんだけどな。

「な~んてことは、ありませんでした!」


あっという間に会社の外へと出てしまった。

退勤ラッシュの時間を過ぎているからか、人はまばら。


そんな人達の流れにのって駅へと向かう。

夕御飯はなんだろうな。
なんて呑気に考えながら、駅の改札口を抜けようとした時、急に後ろへと腕を思いっきり引かれた。


「うわっ!?」

勢いよく引かれたおかげで、バランスを崩し後方へ倒れる。


「メモ見てなかったのか?」


...はずだったのに、背後から聞こえてきたのは東野さんの声。

支えてもらったおかげで、倒れずに済んだ。


「..東野さん?」


慌てて身体を戻し、振り返る。

するとそこには、紛れもなく東野さんの姿があった。...息を切らして。


「えっ、じゃない。ちゃんと見なかったのか?」


「メッ、メモですか?それって業務指示が書いてあった?」


「そうだ」


あれ?でもよく見たけど、業務指示しか書いてなかったわよね?


「...まさか二枚目見なかったのか?」


「えっ!?」


にっ、二枚目!?


「はー ...。その顔じゃ見なかったんだな」


「すみません」


全然気付かなかった。


「ケータイの電池切れちまうし、待ち合わせ場所に櫻田はいないし...。もしかしたらと思って会社戻ってきてよかった」


「......」


こんな時に、嬉しい。なんて言ったら東野さんに怒られちゃうかな?
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