君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「せっかく食事予約しておいたのに...。今日はもう無理だな」



腕時計を見ながらそう話す東野さん。


「予約...してくれたんですか?」


「あぁ。ゆっくり食事でもとりながら、櫻田と話をしたいって思ってな」


東野さん...。


「まぁ、事故とかに遭ってなくてよかったよ」


そう言って笑う東野さんに胸がキュンとなる。


「帰ろうか?送る」


そう言って歩き出す東野さん。


このまま帰るの?...そんなの嫌!!


慌てて後を追い掛け、戸惑いながらも、東野さんのスーツの裾を掴む。


「...櫻田?」


顔が見れない。緊張する!!...でも、このまま帰りたくなんてない。


「あの!...ごめんなさい。せっかく予約してくれたのに」


「いや、俺も急だったし、直接言わなかったからな。悪かった」


「そんなっ!」


思わず顔を上げちゃったおかげで、言葉が続かない。思った以上に東野さんとの距離が近かったから...。



「櫻田?」


って!!ここで緊張してる場合じゃないわ!


「あの!...しょっ、食事へ行きませんか!?」


「えっ?」


頑張れ私!


「レストランじゃなくてもいいです!...東野さんと一緒ならどこで食べてもいいです」


「櫻田...」
「私も東野さんと色々な話をしたいです。それに、このまま帰るのは、い、やです...」


私、大胆すぎた?
帰るのが嫌だなんて、ちょっと先走りすぎ?

東野さんの反応が怖くて顔を上げることが出来ない。


「高級なレストランじゃなくてもいいのか?」


「勿論です!!」


即答した私に、東野さんは面食らったように驚いた表情を見せたが、すぐに笑い出した。


「東野さん?」


なんで笑うの?私、何か可笑しいこと言った?
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