君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「......」


「それにルームシェアについても、櫻田さんの友人と同意見だわ。早いところ三人で話し合うべきよ。なんだか意外だわ。櫻田さんってもっとしっかりとしてる人だと思ってたわ。さ、そろそろ時間よ。戻りましょ」


「う、ん...」


打ちのめされた気分だった。

橘さんに幻滅されちゃったけど、何も言い返せなかった。

橘さんの言う通りだから...。

だって私、全然大人じゃない。

考え方も何もかも。


料理も出来ないし、ほとんど家事は翔ちゃんに任せっきりだし。それに恋愛もまるで子供だ。


ーーーーーー

ーーー


「どうした?食欲ないのか?」


「いいえ!そんなことないです!」


やだ、なにやってるのよ私。

せっかく東野さんと食事に来てるっていうのに。


...昼間、橘さんに言われたことが今でも頭に残ってる。


「そうか?ならいいけど...」


そう言ってまた他愛ない話をする。

だけど、全く頭に入ってこなかった。


全てがモヤモヤしてて、どうしたらいいのか分かっているのに、どうしたらいいのか分からない。そんな感じ。


「...そろそろ帰ろうか?」


「えっ?」


「疲れた顔してる。そんな顔をさせてまで食事したくないしな」


「...すみません」


最悪だ。私。


「いや、最近忙しかったしな。悪かったな、そんな時に誘ってしまって」


「そんなっ!」


そんなことないのにー...。


「帰ろう」


「...はい」


私より東野さんの方が、疲れているに決まってるじゃない。

そんな東野さんにあんなこと言わせるなんて、本当に最悪。


会計を済ませ、店を出る。

なんとなく気まずくて
東野さんの数歩後ろを歩く。


...なんだか懐かしいな。

確か初めて東野さんと仕事で行ったパーティーで三田社長と色々あって、初めて笑顔を見て。

帰り道、こうやって東野さんの後ろを歩いていて願っていた。

この背中に、なんの断りもなく抱きつける日がきますように...。って。

そんな日がきたはずなんだけどな。


スーツ姿の東野さんは本当に素敵で、この後ろ姿を受付に座って、ただじっと見つめていた時もあった。

どうにか振り向いて欲しくて、ずっと見つめていたのに気付いてもらえなかった。

片想いの時は色々な願いがあったのに、なんで私は今の現状に満足していたんだろう。


ふと橘さんの言葉を思い出す。


東野さんとしたら、何か変わるのかしら...。
今のモヤモヤした気持ちもなくなる?

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