君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

そんなことを考えていると、足が自然と止まる。


「...櫻田?どうかしたか?」


すぐに気付いてくれて、気にかけてくれる。


あんなに触れることさえ拒否されてた人に、触れてもらえてる。

私...東野さんが好き。

好きのその先も知りたい。


東野さんはどんな風に抱いてくれるの?
...どんな風に愛してくれるの?


橘さんの言ってた女の幸せを、私も感じることが出来る?


「櫻田?本当に大丈夫か?体調悪いのか?」


なんでだろう?
急に込み上げてきてしまった。


「あの!」


「どうした?」


「私...まだ帰りたくないです」


「えっ?」


好きの気持ちが込み上げてくる。


「東野さんは、私のこと好き、ですか?...付き合って一ヶ月になるのにしてないなんて、おかしいって言われちゃいました!」


「ちょっと待て、ここ街中だから...」


「まっ、待ちません!!私は別に言われるまで、そんなに気にしてませんでした。だって今のままでも充分幸せだったから...」


「櫻田...」


「でも私、東野さんのことが凄く好きで、東野さんが他の人とするとか考えられないですし!嫌だし!...だからっ!」


「分かったから!」


途中で話を遮られてしまった。

東野さんに抱き締められたから...。



「...行こう」



何も言わず腕を引かれて、早足で駆け抜ける。


「あの、東野さん?」


「......」


引っ張られてる状態で、しばらくすると息が上がってくる。


そろそろ身体が限界に近付いてきた時、東野さんのスピードは落ち、マンションへと入る。


えっ...。もしかしてここって...?


急に緊張が高まる。


エレベーターに乗っても、東野さんは一度もこちらを見ることなく、エレベーターは目的の階に辿り着く。

腕を引かれたまま、東野さんの部屋らしきドアの鍵を開けると、そのまま家の中へと招き入れられた。


「あっ、あの東野さん...?」


ドアと東野さんに挟まれて身動きがとれない。


鍵を閉める音と同時に、唇に触れる温かなぬくもり。


「...ンッ!」


いつものとは違うキスに、思わず声が漏れる。

何度も何度も角度を変えて降り注がれるキスに身体が火照る。
< 271 / 411 >

この作品をシェア

pagetop