君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「どっ、努力します」


圭吾さん。


不思議。菜々子って呼ばれて圭吾さんって呼ぶ。

たったそれだけのことだけど、こんなにも嬉しい。


「...だからさ、不安になんてならないで欲しい。こんなに女々しくなるくらい、菜々子のことを思っているから」


「...はい」


そっと東野さんに抱き締められる。


ここに来るまでは本当に頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのか分からなかったのにー...。


色々打ち明けてくれた東野さんに、私も言わずにはいられなかった。


「あの、私もこのままで話を聞いてもらってもいいてすか?」


「...ん?」


甘い声で耳元で囁く東野さんの声にドキッとしてしまう。


じゃなくて!


「あの...私、ずっと東野さんが好きでした。五年前からずっと...。でも東野さんは仕事もできて完璧で、女嫌いで。ただ東野さんに釣り合う女になりたくて仕事頑張ってきました。...完璧な女になりたくて。でも!本当の私は違うんです。考えが子供だし、女のくせに料理も洗濯も家事なんて、何一つ出来ないんです!」


「えっ?」


ここまできたら全部話したい。

本当の私を知ってほしい。


「家事はルームメイトの子に任せっぱなしで、仕事しかしてなくて...こんなダメダメな女なんです!でも、最近色々考えてて。もう27だし、自立した方がいいんじゃないかなって。だけどそうしたら、ちゃんと生活していけるか不安だったし、何よりルームメイトと離れて暮らすって考えたら、寂しいなって思って...」


言葉にして分かった。

私、不安よりも寂しいって気持ちの方が大きいんだ。

翔ちゃんと桜子との生活がなくなることが寂しいんだ...。


「そうか...。菜々子は家事出来ないんだな」


「...はい」


やっぱり幻滅した?
普通はするわよね。女のくせに出来ないなんて。


するとなぜか東野さんは笑い出した。


「えっ...」


なんで笑ってるの?


「あー...わりぃ。本当に意外でさ。だけど俺、そんな菜々子のギャップに、けっこうグッときてるんだけど?」


「ギャップですか?」


「そう。...それにそんなの、今からでも遅くないだろ?」


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