君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「これも旨いな」


あんなに料理なんて嫌いで、出来ないと思っていたのにな。

好きな人に食べてもらえて、『美味しい』って言ってもらえるだけで、こんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。



「...菜々子はすごいな」


「えっ?」


「苦手で出来なかったんだろ?なのに、上達するために努力したんだろう?...凄いよ」


...東野さん?

なんだかいつもと様子が違う東野さん。


「なのに俺は情けないな。せっかく二人でこうやって休日に出掛けてるっていうのに、来た途端にあれだろ?...悪かったな。菜々子も嫌な思いしただろう?」


「いいえ!」


それは仕方ないことじゃない。


「正直さ、菜々子と付き合い初めてから、女嫌いが治ると思ったんだ。...だけどダメだった。菜々子以外の女はダメ。自分でもこんな自分が嫌になるよ」


「東野さん...」


伝えたいことは沢山ある。

だけど、どの言葉を伝えたらいいのか分からなくて、言葉が出てこない。


「悪いな、せっかくの休日にこんな話をして。...食おうか」


「あっ、はい!」


結局、東野さんに何も言えなかった。

私が悩んでいた時には、あんなに東野さんは素敵な言葉をくれたのに。

私ってばなにやってんのよ。


ーーーーーーー

ーーー


それから何事もなかったかのように東野さんは接してきたから、私もさっきの話題には触れなかった。


午後もサイクリングを楽しみながら、途中で止まってお散歩したりと、素敵な時間を過ごすことが出来た。



「ありがとうございましたー」


自転車を返す頃には、辺りは少し薄暗くなっていた。


「だいぶ運動したな」


「明日には筋肉痛になっていそうです」


「確かに」


そう言って笑う東野さん。


だけど私は素直に笑えずにいた。

さっきの東野さんの言葉が、どうしても頭の片隅にあったから...。



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