君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

『これだから女は』

なんて言われたくないから、がむしゃらに仕事をして。

どんなに辛いことがあっても、弱音なんて絶対に吐きたくなかった。

...人前で泣くなんて考えられなかった。

なのに今の私は?


「本当に菜々子はすぐに泣くんだな」


「だっ、だって!」


東野さんの言葉に、表情にすぐ泣かされる。


そんな私の涙をいつも東野さんは拭ってくれて、こんな風に優しく微笑んでくれる。


「だけど、そんな表情豊かな菜々子が好きだよ」


「東野さん...」


キス...だ。

そう思い、目を閉じようとした時、急にドアが開かれる。


「おっ、おかえりなさーい...」


気まずそうにドアを開ける従業員のお姉さんに、頭が上がらず直ぐ様観覧車を降りた。


はっ、恥ずかしい!!
あんな場面を見られたなんて!!
なによりも、地上に着いたことに気付かなかった自分が一番恥ずかしいわ!


そんなことを一人で悶々と考えていると、急に東野さんが我慢出来なくなったかのように、大きな声で笑い出した。


「とっ、東野さん!?」


周囲の人達も、東野さんの笑い声に驚き、振り返り見る。


「だって笑うだろ?気付かなかったなんて...」


そう言ってまた声を押し殺すようにして笑う東野さん。


確かにそうだけど...。

だけど、あまりに笑う東野さんを見て、思わず私も笑ってしまった。


「...きっと俺、一人だったらこんなに笑ったり、恥ずかしい思いなんて出来なかったと思うよ」


「東野さん」


「だからありがとうな」


『そろそろ帰るか』そう言って先に歩き出した東野さん。

だけど私は、なかなか歩き出せずにいた。


『ありがとうな』って...。
さっきの東野さんの表情に胸がキュンとなり、あまりの苦しさに動けずにいた。

ありがとう。は、こっちです。


「菜々子?」


私を呼ぶ東野さん。




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