君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
急に東野さんと二人っきりになってしまった。


緊張する!!
のは、私だけで...。


「こっちは俺が探すから、そっちお願いしてもいいか?」


「はい」


東野さんは別になんとも思ってないんだろうな。

虚しくなりながらも、資料を探す。


それにしても、うち(営業部)の資料室って、なんでこんなに整理されていないんだろう。

秘書課とは大違い。


まぁ...。最初に来た時のあの給湯室を見れば答えは簡単だけどね。


そんなことを考えていて、ろくに前を見ていなかったから、足元にあったダンボールの存在に気付かず、つまずいてしまった。


「きゃあっ!」


咄嗟に本棚につかまったから、衝撃は少なかったものの、その場に転んでしまった。


「いたた...」


「櫻田!?大丈夫か!?」


やだ。恥ずかしい。
こんな失態を東野さんに見られちゃうなんて。


「はい、大丈夫です。すみません」


駆け寄ってきてくれた東野さんに心配かけたくなくて、私は慌てて立ち上がった。


「怪我は?」


そう言って私に触れる東野さん。



「な、いです...本当にすみません。迷惑掛けちゃって」


ただでなくても東野さん、忙しいのに...。
迷惑掛けて。私ってば何やってんのよ。


「ならよかった。...べつに迷惑じゃないし」


東野さんの手が私の頬に触れて、次の瞬間、軽いキスが落とされる。


「とっ、東野さん!?今仕事中...」


「分かってるよ」


まるで子供みたいな拗ねた表情を見せたかと思えば、そっと抱き締められた。


「あんまり、心配させないでくれ」


「えっ?」


「だから、心配させるなって。...いいもんじゃない。俺以外の男と二人っきりでいることが」


「東野さん...」



『えぇーと...。どこにあるんだ?ったく、なんで藤原係長ってば急にあんな資料を探して来いなんて言い出したんだ?』


この声って!


「先に戻る」





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