君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そう言うと私を離し、何事もなかったかのように出口へと向かう東野さん。



『わっ!東野部長!どうしたんですか!?こんなところでっ』


『資料を探しにな』


びっ、くりしたぁー...。


思わずその場に座り込む。

まだドキドキしてる。だって...。


さっきの東野さんの言葉を思い出すと、恥ずかしさが増す。


「あれ?どうしたんですか?櫻田さん。そんなところに座り込んで」


「小山君!」


やっぱりあの声は小山君だったのね。


「なんでもないわ。ちょっとつまずいて、転んでしまっただけ」


私も何事もなかったように立ち上がる。


「大丈夫ですか?心なしか、櫻田さん顔赤くないですか?」


「そっ、そんなことないわよ!」


「そういえばさっき、東野部長がいたってことは、俺が来るまで二人っきりだったってことですよね?...まさか櫻田さん...」


ヤバイ。ばっ、バレた?


「なっ、なに?」


じっと私を見つめる小山君に、緊張がはしる。


「櫻田さん、東野部長に怒られましたね?」


「...は?」


「分かりますよ!東野部長の説教はこう、なんて言うか心の奥にまでズンッ!とくるんですよね!」


「えっと...」


「東野部長ってあまり怒らないじゃないすか!俺も、一回しか怒られたことないんですけど、正直泣きそうな程落ち込みましたよ」


「そっか...」


良かったわ。なんとか変な誤解招かなくて。


「それに!櫻田さんってば、東野部長にホの字ですもんね。そりゃへこむってもんですよ」


そうだった。小山君は私が東野さんを好きだって思ってるんだっけ。まぁ、本当のことだけど...。


「大丈夫っすよ!誰にも言いませんから!むしろ櫻田さんを全力で応援しますから!」


「あっ、ありがとう...。じゃあ私、探し物見つかったからお先に」


「はい!ってやべえ!俺も藤原係長に頼まれていたんだっけ!」


そう言って慌てて探し出す小山君。


きっと大した資料じゃないんだろうな。可哀想に、小山君。


そんなことを思いながらも、資料を持ち東野さんの元へと向かう。


「すみません東野さん、ありました」


持ってきた資料を差し出す。


「ありがとう。ちょっと...」


なぜか東野さんはメモを取り出し、何か書き出した。


「読んでおくように」


「はぁ...」


わざわざ折って差し出されたメモ紙を受け取り、自分の席へと戻る。






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