君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
今までひた隠ししてきたっていうのに、よりによって一番バレたくない橘さんにバレたら、終わりだわ。


「そうなの?ふ~ん…」


「なによ。本当よ?橘さんだってよく知ってるでしょ?私が男に興味はないって。私には仕事が一番なのよ」


「そんな人だっていつかは恋に落ちるものじゃない?案外…ねぇ?」


こいつ…!
どこまでも私を揺さ振って弱味を握るつもりね!?
悪いけど、敵に弱味を見せるほど私は弱い人間じゃないのよ!


「残念だけど、橘さんが期待しているような展開は望めないわよ?」


私はつとめて笑顔で言った。変に疑われないように。


「だって私、東野さんのこと入社式の時から嫌いだったのよ」


「ふ~ん…そうだったのか」


「えっ…」


突然背後から聞こえてきた声。


うん…
分かるよ、この声。


いつもの私だったら嬉しいはずなのに、今の私は違う。

後ろを振り返ることさえ出来ない。

「東野さん、部長昇進おめでとうございます」


社交辞令に則り橘さんは営業スマイルで言う。

「どうもありがとう」


それに対してやっぱり社交辞令で言葉を返す東野さん。

あぁ…後ろにいるのに顔が見れない。
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